鈴木研一
●ミュージシャン。『人間椅子』のベース/ヴォーカル。ヘヴィメタル、プログレの影響を反映した曲作りと、文学的歌詞を津軽弁で唄う独自の世界観で、ハードロックファンから絶大な支持を受けている。平成元年にTBSテレビ「いかすバンド天国」に出演。鈴木さんの「ねずみ男」の衣装と文芸ロックが注目を集めてメジャーデビュー。以来、ライブを中心に精力的に活動中。平成15年1月22日、11枚目のオリジナルアルバム「修羅囃子」を発売。
>>人間椅子オフィシャルサイト

鈴木研一さん(ミュージシャン) ベーシストはいい腹してる

 バンドの歴史はベーシストの肥満の歴史でもありました。デビュー当時68キロ、ピーク時96キロ、現在86キロ、その間ファンの皆様からたくさんの「痩せてくれ」レターを頂きました。太り始めのキッカケははっきりしていて、ずばりパチンコです。バンド活動もバイトもしないで毎日朝から晩まで打ち続け、その間食事はせず缶コーヒーをガブ飲みし、勝った金でかつ丼大盛りと盛りそばのセット、これを半年間続けた結果元には戻れない体になってしまったのでした。

 そもそも太る下地はありました。まず甘いもの好き。酒は一滴も飲めず、生クリームとあんこに目がなく、夢はプリンの風呂に入ること。今は風呂なしアパートに住んでいるので無理ですが、いずれは実現させたいものです。あと、相撲好き。小さい頃ひょろひょろに痩せていたので力士のようなでかい体になりたいと願っていましたが、今頃になって叶ったのだと思われます。よく、ダイエットする人は痩せた自分を強くイメージすると効き目があると耳にしますが、その逆パターンです。ライブ前に気合いを入れるために力士のように突き出た腹を両手でパンパンと叩きますが、さしずめ土俵入りです。

 さて僕のダイエットを紹介しましょう。まず「下痢ダイエット」これは自分のように胃腸の弱い人にしか効きませんが、夜寝る前に油っこく消化の悪いものを腹いっぱい食べ、冷たいジュースをゴクゴク飲むだけでOK。夜中もしくは朝方に猛烈な下痢に襲われて1キロ減です。よくやります。次に「金欠ダイエット」給料をギャンブル等に全突っ込みし、その後の生活を必然的に粗食に追い込むという乱暴な方法です。勝ってしまうとスーパーリッチな食事でかえって太ってしまうので注意してください。

 太っても悪いことばかりではありません。ステージ衣装の和服が似合うようになったし、デビュー当時はずっしり重かったベースが体の一部のように感じます。大体ベテランベーシストには太った人が多く、イエスのクリス・スクワイア、元キングクリムゾンのジョン・ウェットン、元ELPのグレック・レイクと、いい音出すベーシストはいい腹しています。僕もまねして腹にベースを載せて演奏することにします。


 人間椅子のメンバーの皆さんと僕(うえさん)は同じ世代なこともあり、唄われている世界感も大好きで、とても親近感があります。自分が30歳の時、ちょうど人間椅子の「三十歳」という曲を聴いて非常に共感したものです。
 鈴木さんがパチンコと相撲が好きなのは、人間椅子の曲の題材にもよく扱われているので、なるほど!と思いました。逆に、甘い食べ物が好きでお酒は飲まれないというのは意外でした。僕も「甘き物」が大好きで和菓子も洋菓子も何でもOKで、しかもそのうえ大酒飲みと来ているので余計に身につまされます。
 人間椅子の楽曲はおどろおどろしいイメージがあるかも知れませんが、ライブではパワフルな演奏による熱狂的な盛り上がりと、軽妙洒脱なMCによる「和み感」があいまって、実に爽快です。音楽を愛してテクニックに磨きをかけ、確かな腕で楽器を奏でて存分に楽しんでいるのがステージから力強く伝わってきます。それはロックを通した土着的なお祭りであり、芸能の本質のような気がします。
 ピーク時は本当に関取みたいな貫禄で迫力満点だった鈴木さんですが、ダイエットの効あってか、最近のライブではいくぶん引き締まった体で、とてもカッコ良かったです。ちょっと過激なダイエット方法ではありますが、基礎体力に自信がある人なら真似してみてはいかがでしょう? 鈴木さん、貴重な体験談をありがとうございました!