三平×2 さん(お笑い芸人) 食費を削るほどの欲望 どうも。大川興業の三平×2(みひらさんぺい)です。見た目が邦彦という相方と「ペイバービュウ」なるコンビを組むかたわら、国井咲也という芸人と「アニメ会」というトークユニットを展開し、あげく「西口プロレス」というお笑いプロレス団体に参戦する、スワッピングパーティーのような芸能活動をしている芸人です。以後、お見知りおきを。 さて「ダイエット」というテーマでコラムを書いてくれとのことなんだけど、身長172cmの俺の現在の体重は68kg。まあ痩せてるって感じではないけど肥満という感じでもない。こういう体をとりあえずキープできてるのは何故かとよーく考えてみたら、芸人にとっては売れるまでの毎日がダイエット生活そのものだからだ。つまり皆さんも俺ら貧乏芸人の経済状況を模倣すれば、自然とダイエット効果を得られるということではないだろうか。 ちなみに俺が今まで耳にした貧乏芸人の食に関する伝説だと、ティッシュにマヨネーズつけて食べてた奴もいたし、壁土を削ってふりかけがわりにして食ってた奴もいたし、ハトを捕まえて動物性タンパク質を摂取してた奴もいた。食生活というよりはショック生活だよ。 そういや俺も昔、近所の地鶏飼ってる家に早朝に忍び込んでちょこちょこ玉子を失敬してたりしたんだけど、あるときその玉子からヒヨコがかえっちゃって参ったことがあったけどね。まあここまでサバイバルになることもないけど、自分を経済的に追い込むとあまり太らないと思うよ。 ただここでひとつ落とし穴があって、貧乏でいさえすれば絶対に太ることはないという考えは慢心以外の何者でもない。貧乏だって太ることがある。というか貧乏だからこそ太るケースもあるんだよ。だって新宿駅前をうろつく乞食にだってけっこう恰幅いい奴いるじゃん。ゴミ漁っても太る奴は太る、それか今の日本の食料事情なんだから。 これは極端な例だとしても、貧乏人をコレステロールまみれにしようとする罠は日常のいたるところに潜んでいる。それは何かというと、今や全国各地に店舗をかまえるにいたった100円ショップ。この100円ショップというのが実に曲者なんだよ。 ここでは乾麺類――そば、うどん、パスタなどがすべて一袋100円。貧乏人は安く手に入り簡単に調理できるこの炭水化物が大好物。これを過剰に摂取できる中途半端な貧乏って環境が肥満の大敵なんだよ。俺もー時期、パスタを大量に茄でては塩と納豆をかけて食べるという食生活を毎日続けてたんだけど、すぐ体重が7〜8kgアップしたもん。別に濃厚なミートソースなんかをかけてたわけじゃない、そんなことしなくても十分にパスタは爆弾として機能するよ。 これを回避するには、やはり少なからず本人の意志が重要になってくる。とはいえガマンして食事量を減らせるくらいの意識がありゃ、最初から肥満になることなんかないしね。意志の弱い人はこの意識改革をどうすればいいか? これは「食わない」ではなく「食ってる場合じゃない」という状況にもっていけばいいんだよ。 どういうことかというと、食事以上に大事な趣味を作ること。食料より金をかけたくなる趣味、食費を削ってでも集めたいコレクションなんかを作ることが第一なのである。 俺の場合は芸人でありながらいわゆるアニメオタクで、秋葉原やコミケ等の同人誌即完会にあしげく通い、グッズその他に俺がつぎ込む年間支出は総額約50万円。俺の芸能収入が年間10万前後ということを考えれば大変なパーセンテージだ。数字の上でも「飯なんかに金を使ってる場合じゃない」というのは一目瞭然だろう。だって100円ショツプのパスタを2食ガマンすればガシャボンが1回できるんだもん。バカと言われればパカとしか言えないけど、趣味人にそういった意見は野暮ってもんだぜ。だって欲しいのは理屈じゃないんだから。 趣味をもつこと、しかも収集系の趣味をもてば、おのずと食事にかける費用は減り、結果食事量は最低限自分が生きれるだけのものとなる。事実俺もこのやり方でパスタ太りから抜け出し、ピーク時75kgあった体重も前述通り68kg。今も目下減少中の日々なのであります。 もちろん基本的にはプチ断食だから不健康な痩せ方だけど、不健康こそロック。健康的なダイエットに牙をむく物欲から始まる反体制なダイエットがあってもいいじゃないか? 棺桶に入るためにベストなシェイプにするってのがロックってもんじゃん? で、その棺桶にフィギュアやら同人誌やらを入れてもらって茶毘に付してもらえりゃオタクとしても万事OK! 毒を持って毒を制す、煩悩を持って煩悩を制す。ダイエットってのは煩悩にまみれてていいの。だってダイエットってのがそもそも綺麗に見られたいという、渦巻く欲望にまみれたものなんだから。
|